グランピング事業の開業準備と事業計画立案のポイント

はじめに

2015年からブームとなっているグランピング。既に全国で50か所以上のグランピング施設が開業している。現状では宿泊事業者のグランピング市場への参入が多いが、2017年頃からは、不動産事業者やBtoB事業を本業とする事業者の参入も相次いでいる。参加プレーヤーが増加し、グランピング事業に関心がある方も増えてきており、今回はグランピング施設開業のためのポイントや準備事項を整理してみた。
また、関東圏や関西圏で特に人気があり、知名度のあるグランピング施設の経営優位性についても簡単に事例企業として解説しているので、参考にしていただきたい。

 

 

グランピングの立地選定

グランピングの開設にあたって立地選定は重要である。既に土地を所有している場合はエリア検討の余地はないかもしれないが、基本的に関東圏、関西圏、中京圏の大都市から車で2時間圏内を選んだ方がよい。

 

 

その土地に訪れる理由が作れるか

また、ロケーションの選定であるが、海や森に囲まれた自然豊かな場所が前提だが、都市部からの移動距離が長くなるにつれ、その場所に向かう理由が明確でなければならない。
わざわざ足を伸ばす場所として理由が明確でない場合、中長期的に施設を繁盛させる難易度が高くなる。グランピングの客層は比較的若い世代が多いため、古くから知名度がある観光地であることは絶対条件ではない。

 

 

土地整備費用・関連法規のハードルはどれくらいの高さか

用地選定には、開発許可申請の必要有無や上水下水の引き込み工事の必要性にも注意したい。広大な土地で、ロケーションが良いという理由だけで選定すると、事業用地化のプロセスで想定外の支出が必要になることもある。
また、旅館業法の許可を得るのか、それともテント貸与業やオートキャンプ場として事業を進めるのかといった観点も必要である。グランピング施設を宿泊業と捉え開業を考える場合、指定された用途地域によっては、宿泊業が認められない場所もあるので注意が必要だ。また、景観条例などで建築物に色や形状にさまざまな規制がかけられている場所も注意する必要がある。

 

 

農地の場合は転用申請が必要

グランピングの開業を検討している土地が農地の指定を受けている場合は、転用申請が必要で、転用土地の面積によっては数か月の期間を要する場合もある。ゴールデンウィークや夏休みのハイシーズン前に開業を計画している場合は、タイミングを逸するリスクがないか事前の調査が必要である。

 

 

建物が建てられない場所もある

不動産業者の土地情報サイトなどで、極端に安い坪単価で掲載されている土地には理由がある。土地価格が非常に安い場合の理由として、市街化調整区域で建物が建築できない場合が最も多い。他には開発工事や水道引き込み工事の負担が大きい場合や、そもそもグランピングどころではない傾斜がきつい土地、接道がとれない土地などがあるので、注意したい。

 

 

土地の大きさは十分か

営業的な視点でいえば、人件費や管理棟などのコストを吸収するためには、一定規模が必要だ。宿泊棟数が少ないと、ハイシーズンに十分な利益を得ることができない。そういった点では1500坪以上の敷地面積は最低でも確保したい。また、事業規模が小さいとテレビや雑誌の取材などを受けられる機会も激減するため、集客を軌道に乗せにくい点にも注意が必要である。
ホテル事業者や温浴施設の事業者がグランピング施設を隣接地で行う場合は、既存人員で事業を運営できる場合がある。また、管理棟を新たに設ける必要がないことも多く、スムーズに事業開設が運ぶケースが多い。

 

 

グランピングのイニシャルコスト

イニシャルコストは施設規模や宿泊棟の種類で大きく変わる。コテージやヴィラタイプのグランピング施設の整備には、多額の資金が必要となる。宿泊棟の数は10棟以上が理想であり、ヴィラやコテージで整備をする場合は、億単位の投資が必要になる。
テントでグランピング事業を計画する場合は、デッキ工事費、テント購入費、管理棟建築費、電気引き込み工事、水道設備工事、家具、家電の購入費などを合算しても、一室500万円までで整備できる場合がある。とくにウエイトの大きい管理棟の整備が必要でない場合は、イニシャルコストは大幅に削減され、初期投資の回収が1年、2年となる場合がある。

 

 

大きく変動するデッキ工事に注意が必要

デッキ工事については、傾斜地か平坦地で大幅に金額がかわる。傾斜地は眺望が良いケースも多く魅力的ではあるが、平坦地と比較してデッキ工事が3倍~5倍程度の膨らむ可能性もある。グランピング施設にデッキは必須ではないが、地面にテントを直置きすると、換気がとれずにカビが発生するリスクが高くなる。また、雨水対策、虫対策にも問題が発生するケースが多い。

 

 

グランピング事業の収支計画

グランピング事業の運営の必要経費は下記のようなものである。

・食材費

夕食、朝食の提供を行う場合は必要となる。メニューの数や素材については利用者の満足度を大きく左右するため慎重な検討が必要だ。また保管管理についても吟味しなければ、ロスの問題や人件費増の原因となりやすい。

・リネン費

女性客、子連れのファミリーを安定的に集客するためには、一定のレベルは必要。

 

・水道光熱費

いわゆる電気代やガス代。入浴施設を整備する場合などは多額のランニングコストを負担することになるため、事前の調査が重要。照明、空調、BBQのためのガス代などはさほど大きなウエイトを占めることはない。

 

・人件費

まず料理の提供スタイルで大きく人件費は変動する。食事の提供にこだわりすぎると、閑散期の固定人件費など、後々の施設経営に大きな負担につながる場合がある。
基本的に宿泊事業の場合は営業時間が長いため、シフト制を組むことになる。時差出勤や定休日を設けるなどの工夫で効率化やスタッフの負担軽減を検討する必要がある。

 

・地代・公租公課

土地を借りる場合は借地料が必要。所有する場合は固定資産税の負担が必要となる。

 

・リース費用・減価償却費

テントや家具、家電をリースする場合はリース料が必要であり、自己資金で購入する場合は減価償却費を計上する必要がある。また、管理棟において、厨房設備、トイレ、シャワー室、レジなどを整備した場合も同様、減価償却費を見込む必要がある。

 

・支払い手数料・ホームページの運営経費

ポータルサイトや旅行代理店からの集客には手数料が必要となる。10%前後が相場。自社サイトの運営費には、サーバー関連費などが必要。

 

・クレジットカード手数料

宿泊費の精算はクレジットカード対応が必須である。手数料は3%~4%が相場。

 

・車両購入費

広大な敷地内で食材供給や清掃作業を行うためには車両があった方はよい。また、駅からの送迎をする場合には、送迎車の購入が必要となる。

 

・消耗備品費

BBQ用のグリルや食器などの購入が必要。

 

 

グランピング施設の組織運営と人材確保

近年は地方都市では特に採用環境が厳しい。有料の募集広告をしても、応募がゼロというケースもある。特に飲食やサービス業の求人状況は厳しく、若い人材の確保が必要なグランピング事業においても採用は経営の最難関のハードルかもしれない。
田舎での採用に限界がある場合は、都市部からの求人を前提に、寄宿舎や寮の整備や住宅手当の支給などを検討する必要がある。地方都市では空き家が多くなっており、それらを有効活用することも視野にいれておきたい。
また採用する人員を極小化できるようなオペレーションの仕組みづくりも重要である。具体的には集客や予約受付処理はインターネットを活用して省力化することや食材をセントラルキッチンで加工する方向性や、その業務自体をアウトソーシングする方向性である。

 

 

各サイトにトイレや風呂を整備するべきか

できればトイレや風呂は低価格のユニットタイプでよいので、個別サイトに整備したい。トイレや風呂の投資は集客に影響を与える。トイレや入浴設備の不便さは小さな子供連れや女性客のストレスになるため、グランピング施設選択のポイントになる。グランピング施設同士の競合環境で不利にならないために検討が必要。
サイト数が多く、大きな敷地で配管工事が多額になる場合や水の使用量で貯水タンクの整備が多額になる場合は集合型のトイレや入浴設備を整備する方が良いケースもある。

 

 

管理棟の整備費用を安く抑えられるかがポイント

収益性の高いグランピング施設の開業を実現するためには、管理棟の整備費用のコントロールが重要。管理棟整備には、グランピング施設の運営方針が反映されるため、投資過剰にならないように注意が必要だ。食事の提供方針は厨房設備費に、入浴やトイレなどの快適性も設備投資額に大きく影響する。集客や客単価に好影響を与えない投資は、無駄遣いという認識をもって検討したいテーマである。

 

 

グランピング施設には保健所・飲食店許可は必須

食材の提供を行う場合は飲食店営業許可や食肉販売免許、魚介類販売免許、酒類販売免許のいずれかを保健所に申請し、検査をうけて許可をもらう必要がある。食材提供を行わず、場所だけを貸すオートキャンプ場のような形態であれば保健所への申請は必要ないが、グランピング施設として、客単価や集客力を高めるためには、検討が必要な事項である。

 

 

関東・関西の人気グランピング施設を参考事例にする

グランピング施設開業を考えるにあたり、参考になりそうなグランピング施設をいくつかピックアップしている。いずれのグランピング施設も集客力があり、ハイシーズンや週末の予約はなかなか取りづらい。各施設が保有する強みや集客力の源泉を参考事例として簡単にまとめているので、参考にしていただきたい。

 

 

農園リゾート・ザ・ファーム

千葉県香取市にあるグランピング施設。国内最大の農業事業者である株式会社和郷による運営。農業生産法人をグループに持つ強みを活かし、40種類の野菜を栽培している農場も施設内に整備している。冬季の集客に寄与する温泉施設(かりんの湯)もあり、関東圏では屈指の人気を誇るグランピング施設である。

 

 

農園リゾート・ザ・ファームの参考ポイント

ザ・ファームの農場は会員制貸農園も設定されている。会員になるとグランピングコテージや農園キャンプの宿泊料金が20%OFFとなる特典があり、上得意客の囲い込みにつながっている。また、農園の収穫体験を定期的にイベントとして開催し、会員のリピーター化が図られている。

 

 

ツインリンクもてぎ(森と星空のキャンプビレッジ)

栃木県茂木町にある大規模レジャー施設。株式会社モビリティランドの運営。2006年株式会社鈴鹿サーキットランドと株式会社ツインリンクもてぎが対等合併して設立された。
他のグランピング施設とは一線を画すモータースポーツをコアな差別化ポイントに持ち、関東圏でも高い知名度を誇るグランピング施設である。
モータースポーツ以外にもジップラインや天体観察、空中アスレチック、巨大ネットの森、ハローウッズ、迷宮森殿ITADAKI、ホンダコレクションホールなど多彩なアクティビティメニューが魅力の施設である。

 

 

ツインリンクもてぎの優位性や参考ポイント

画像出典:ツインリンクもてぎ公式HP

株式会社モビリティランドは本田技研工業株式会社の100%子会社である。本田技研工業のバックグラウンドもあり、全日本ロードレース選手権、SUPER・GT、ツインリンクもてぎ2&4レース、全日本カート選手権など世界選手権や全日本選手権などモータースポーツ競技会や参加型レースが開催されており、メディア露出や話題性に事欠かない。子連れ客向けには、各種アクティビティやテーマパーク並みのコンテンツを有しており、高い集客力を保持している。

 

 

 

 

グランドーム天橋立

2018年7月に京都府宮津市にて開業したグランピング施設。運営事業者はリゾートマンションの開発分譲やリゾート会員権の企画販売を行っているマリントピアリゾート。高級旅館業態の運営も同地で行っている。グランドーム天橋立は12棟のドーム型テントを約5000㎡の敷地に設置している。
日帰りグランピングプランや冬グランピングプランの設定に加え、キッチンカーによるBARサービスや天然温泉の貸切り風呂(有料)など多様なユーザーニーズに応えられる工夫が行われている。

 

 

画像出典:グランドーム京都天橋立

グランドーム天橋立の優位性や参考ポイント

隣接地のマリントピアザスイート(ヴィラタイプの宿泊施設)や貸切りグランピング施設The・Bondと管理棟を共用し、人員配置や設備投資の効率化が図られている。また、ドーム型テントを12棟敷地内に配置することで、他所では見られない特異な環境を創り出し、差別化や認知アップを図っている。

 

 

GRAXるり渓

京都府南丹市園部町。るり渓温泉を指定管理者として運営するカトープレジャーグループが運営。カトープレジャーグループはGRAX以外にもスモールラグジュアリー旅館の“ふふ”や高級うどん業態の“つるとんたん”を運営している。
GRAXはるり渓温泉の隣接地にあったグランドをグランピング施設に転用したもの。テントやコテージなど数種類の宿泊施設が展開されている。開業時期は関西のグランピングの中でも早く2016年6月。

 

 

GRAXるり渓の優位性や参考ポイント

初期投資がうまく抑えられている。高額な投資が必要なコテージから十数万円のテントまで幅広く施設バリエーションを提供し、幅広い宿泊ニーズにこたえている。また、眺望などロケーションは犠牲になっているが、グランドという平坦地にグランピング施設を整備しているため、デッキ工事などは安価に抑えられている。
人件費負担をおさえるための工夫もある。朝食については近隣のカフェと連携しており、食材加工に要する負担が回避されている。
ディナーについてもプラン設定があり、食材手配や準備作業は単純化されている。
入浴施設として、るり渓温泉への入浴を案内しているため、温泉施設への送客効果が生まれている。

 

 

ネスタリゾート神戸

2016年7月1日にオープンした兵庫県三木市の複合リゾート施設。パチンコホールを運営する延田エンタープライズの運営。2015年12月に閉鎖したグリーンピア三木を11億円で購入し、リゾート施設として再オープンさせた。資本力を活かしたテレビCMや事業規模の大きさが競争力になっている。

 

 

ネスタリゾートの優位性や参考ポイント

グランピングの閑散期にあたる冬季にも、大規模なイルミネーションや各種イベントを実施して、集客力を維持する努力をしている。ネスタリゾートの場合は大型ホテルも複数、施設内に保有しているため、閑散期対策にも大きな広告投資をする必要があると思われるが、その予算規模は関西でもトップクラスであろう。
施設構成をみても、延羽の湯など温泉施設や日帰りグランピングエリアなど多様な顧客ニーズに応えられる大型リゾートエリアを形成している。資本力次第といえなくもないが、他資本でも近隣にテーマパークや人気温泉施設がある場合は、ネスタリゾートのような総合的な集客力が見込める。
実際、東京ディズニーランド、USJ大阪、長島スパーランドなど入場者数が多いレジャー施設の近隣にあるホテルは高稼働であるケースが多い。

 

 

パームガーデン舞洲

大阪市にあるトレーラーハウスを活用したグランピング施設。ホテルチェーンのWBFグループが運営している。都市部に立地しており、アクセスの良さから日帰りグランピングやマイカーがなく公共交通機関を利用しているユーザーの集客に強い。

 

 

パームガーデン舞洲の優位性や参考ポイント

グランピングと一緒に検索されるキーワードには“電車でいける”、“日帰り”などが上位にきている。大半のグランピング施設はアウトドアレジャー施設であるがゆえ、地方にある。自然人口の多い大阪市内からマイカーがなくても来訪が可能なロケーションにあることは、パームガーデン舞洲の強みといえる。

 

 

グランエレメント滋賀

2017年6月3日滋賀県米原市にオープンしたグランピング施設。もともと当地でゴルフ場を指定管理者として運営していた奥伊吹観光株式会社の経営。奥伊吹観光株式会社は関西でも有数の人気スキー場である奥伊吹スキー場の運営会社でもある。グランエレメント滋賀は豪雪地帯に立地しているため、冬季は営業していない。スキー場運営が本業である同社にとっては、人員の効率的な配置にもグランピング事業は貢献している。

 

 

グランエレメント滋賀の優位性や参考ポイント

グランエレメント滋賀は特に女性人気が高いグランピング施設である。料理メニューについても、単なるBBQというよりは女性目線を意識して開発されている。公式サイトやプレスリリースにも女性アウトドア料理研究家とコラボレーションしてメニューを開発したことが記載されている。
また、グランピング施設内にはBARが設置され、料金もオールインクルーシブ方式を採用している。おしゃれなイメージを訴求できるBARの存在などから、女性や若者の支持を集めていると考えられる。
指定管理者として施設運営をしているため、土地に関する初期投資が少なく抑えられているのもポイント。ただ、建物の投資回収などは指定管理者から外れた場合、どのように考えていくかは課題になるケースもある。

 

 

FBI淡路

画像出典:FBI淡路公式HP

キャンプ場をリノベーションしたグランピング施設。淡路島の海水浴場ができる船瀬キャンプ場を再生したファーストクラスバックパッカーズの運営。FBIの名前の由来は、Firstclass・Backpackers・Innの頭文字。海水浴ができるロケーションということもあり、夏季は予約が困難な人気グランピング施設。

 

 

 

FBI淡路の優位性や参考ポイント

初期投資がうまく抑えられている。常設テントだけでなく、通常のキャンプ場と同様、ユーザーがテントを持ち込んでキャンプを楽しむこともできる。通常のキャンプ場同様、シャワー設備やトイレなどは集合型となっており、投資負担が低くおさえられている。

 

 

グランピング施設の集客に必要な要素を考える

上記の人気グランピング施設の成功事例を参考にすると、グランピング事業の成功ポイントも絞られてくる。各グランピング施設とともに、ある程度、投資をおさえながら、集客に必要な要素を磨き、ターゲットへの訴求力を高めている。冬季の集客強化策については、雪の影響で営業ができないグランエレメント滋賀をのぞく大半のグランピング施設で実施されている。取り上げた成功事例は比較的規模の大きい事業者が多く、組織力がある程度ある。そういった事業者であるから有効な策が実施できていることもあるが、各々の企業努力によって、冬季営業しないキャンプ場と比較すると桁違いの年商規模を誇っているのが実情である。

 

 

グランピング経営の閑散期対策・平日対策

グランピング施設の安定経営のためには、冬季の閑散期対策と平日対策がカギとなる。冬については、冬グランピングプランと称して鍋料理や煮込み料理を提案している施設もある。また、テント内にこたつやストーブなどの防寒設備を付加して、冬季集客に尽力しているグランピング施設もある。
平日の集客対策については、学校行事などの教育旅行ニーズを狙って成功しているオートキャンプ場がある。大人数・団体の受け入れができるBBQコーナーの設置などができれば、可能性は高い。また、団体や大人数グループは参加者のスケジュール調整が難しくなるため、悪天候でも確実にグランピングが体験できる施設を選ぶ傾向が強い。雨対策などは初期投資の負担を重くするが、一考の余地がある。

 

 

グランピング施設のWEB集客のポイント

グランピング施設に旅行をしようと考えているユーザーがYAHOOやグーグルでグランピング施設を検索する場合、グランピング+地名の検索が多い。特に車で移動する前提になっているユーザーが多いので、「グランピング+関東」、「グランピング+関西」などの移動距離範囲のキーワードで多く検索されている。そのような複合キーワードの検索結果には、対象エリア内のグランピング施設を収集整理した“まとめサイト”が上位に表示されることが多い。単体施設の公式サイトで上位表示されることは難しくなっており、こうしたサイトへの掲載が集客の重要なポイントとなる。広告でマネタイズしている“まとめサイト”には、広告出稿を取引条件にするのも一つの選択肢であろう。

 

 

グランピング施設のモデル損益

下表は中規模タイプのグランピング施設の収支モデルである。食材原価や人件費をコントロールして、営業利益率は20%以上を目指したい。リースなどを組み合わせ、初期投資を抑えれば、2年程度のキャッシュフローで初期投資を回収できる可能性がある。ホテルや旅館などのROI(利回り)と比較しても、かなり高い数字であり、投資回収の早い事業といえる。

 

中規模グランピング施設の収支モデル(単位:千円)

 

会員制グランピング施設の可能性

安定経営のためには会員制も検討したい。会員制度を導入した場合、ユーザーに会費や入会金を回収しようという心理が働くため、安定的な予約につながりやすい。会員限定までしてしまうと、逆に集客しにくくなる可能性もある。ハイシーズンの早期予約特典や少額な割引特典、会員限定のイベントなどが望ましい。会員制度の採用で、安定経営の代名詞であるストック収益型のビジネスモデルに近づけることができる点は大きな魅力である。

 

 

グランピング施設開業・事業計画のポイントまとめ

  1. 不動産物件は可能な限り、開発許可申請取得済の物件を探す
  2. その場所固有の“訪れる理由”を創り出せる物件を選ぶ
  3. 宿泊業が営業できる用途地域であるか確認する
  4. 農地でグランピング施設開業の場合は転用に要する時間をスケジュールに織り込む
  5. 景観条例や地区条例で各種規制がないか事前に確認する
  6. グランピング事業の経済性確保には一定規模なため、ある程度広い土地を選択する
  7. デッキ工事が高額になりやすい極端な傾斜地は避ける
  8. 管理棟の整備コストを抑えるため、転用可能な建物がある物件を選ぶ
  9. 近隣飲食店と連携し、スタッフの負担軽減や固定人件費の極小化を考える
  10. 近隣の日帰り温泉や大型集客施設との連携ができないか検討する
  11. トイレや入浴設備は個別サイトに整備が望ましいが、工事費に注意が必要である
  12. 冬グランピングプランや防寒設備の導入で冬季の閑散期対策を練っておく
  13. SNSと親和性を発揮させるため、SNS映えするグランピング施設をめざす
  14. 平日対策には学校行事などの団体集客を有効であり、開業計画に織り込んでおく
  15. WEB集客を成功のために、“グランピングのまとめサイト”への掲載方法を検討する
  16. 営業利益率は20%以上を目標に損益計画を策定する
  17. ストック収益型のビジネスモデルに近づけるため、会員制度を検討する

 

グランピング業界の将来

グランピング施設を開業するにあたり、中長期的に経営がうまくいくのかを気にしない方はいないだろう。そうなると当然、グランピング業界の将来性や市場規模についても考える必要がある。
国内のアウトドア人口はここ数年増加傾向にある。特にグランピング施設の登場はキャンプ活動のハードルを下げた点で重要である。現時点では、キャンプ参加者のボリュームゾーンは40代ファミリーであるが、グランピング業界の成長に伴い、女性や20代の若年層のアウトドア参加者が増えてきている。アウトドア用品の市場規模も拡大を続け、アパレル系アウトドアメーカーも、キャンプギア系アウトドアメーカーも業績好調な企業が多い。

このようなアウトドア用品メーカーから次々と魅力的な新商品が投入され、グランピングなどのレジャーの訴求力はますます強くなると予想される。
また、もう一点グランピング業界の将来を牽引するものとして、SNSの存在がある。SNSの普及とグランピングの成長は親和性が高い。国民の大半がカメラマン化しつつある昨今では、おしゃれな写真がとれるグランピングの市場は今後も成長していくのではないか。初期投資の負担が他の宿泊業態よりも軽く、高いROIを期待できるグランピングは今後も新施設の開業が継続的に行われるだろう。グランピングは若い世代を中心に成長していくと思われる。

 

 

地方創生とグランピング

近年は地方自治体も観光の起爆剤にしようということで、グランピング事業者の誘致に熱心である。また行政機関の関心事として遊休土地の活用という側面もある。キャンプ場の約7割は公営施設ということもあり、今後は公営施設の民間事業者への貸し出しや払い下げ、公園の有効活用などが事例として増えてくるだろう。グランピングには、地域の食材を流通させる効果もあり、農業・水産従事者や小売事業者にもシナジー効果を発揮できる可能性がある。そのような意味でもグランピング事業は地方創生の立役者になる可能性を秘めているといえるだろう。

 

 

グランピング開業のためのパートナー

グランピング施設の開業については、業界が比較的新しいため、コンサルティングサービスもあまり見当たらない。また、ロケーション確保が難しく、不動産物件によって初期投資額が大きく変動するため、収支モデルや開業方法をパッケージ化することが困難である。