グランピングは地方創生の救世主となりえるか?

宿泊施設の整備は観光消費の増加に直結

一般的な傾向として、宿泊客と日帰り客の観光消費額は3倍~5倍は宿泊客の消費額が多い。滞在時間が長くなればなるほど、食事の回数や移動距離が長くなるため、関連業界への経済効果が大きくなる。
また、土産物の購入機会も宿泊することにより、発生することが多く、日帰り客の数倍の消費支出が行われている。

 

 

グランピングビジネスが生む周辺施設への経済効果

グランピング施設には、ホテルや旅館と異なり、自分でアウトドア調理を楽しむことができる施設も多い。このようなグランピング施設が地域内に存在する場合は、近隣のスーパーマーケットや道の駅など小売業にも波及効果が生まれる。この傾向はキャンプ場にもみられる。夏季などアウトドア繁忙期には、キャンプ場付近の食品スーパーが利用される機会も多く、そのようなアウトドアを楽しむユーザーは一般的な買い物客よりも、高単価な消費を行うケースが多い。酒や牛肉、カセットボンベ、木炭などの高単価商品が購入されるためだ。

 

 

温泉施設や飲食店・カフェへの集客効果も

また、日帰り温泉に代表される入浴施設とグランピングは相性がよく、グランピング事業者の参入が温泉入浴者の集客増加につながるケースも多い。
カフェなど飲食事業者とグランピング事業者の連携の事例もある。朝食の提供は特にグランピング施設の運営面で負担となることが多く、近隣の飲食事業者との連携でこの負担を解消している事例も散見される。

 

 

地方で取り組める観光ビジネスの有望株はグランピング

グランピング事業の経済性で特に優れているのは、初期投資の少なさである。ホテルや旅館などの宿泊施設と比較すると、10分の1程度の整備費用で開業が可能である。
ホテルなど数億円、時には数十億円~数百億円規模の投資ができる企業は限られている。地方の中小企業でも手が届く、観光ビジネスの有望株がグランピングだ。
特に地方都市では過疎化や人口減少が続き、地域内に限定されるタイプの建設、自動車、小売りなどのビジネスは厳しさが増している。近年は行政関係者も観光分野を特に重視し、関連業界の事業者誘致に取り組む事例は急増している。

 

 

地域の資産を活かせるグランピングは地方創生の理念とマッチ

美しい自然風景を数多く残し、その地ならではの自然体験が可能な地方都市においては、グランピングビジネスを推進することは、地方創生の理念にマッチした活動につながる。市が所有する遊休地活用、維持管理コストが負担になっている遊休設備、建物の活用、若者の雇用創出、観光客数増加を狙うイベントによる町おこしなど、地方自治体が検討することが多いテーマとグランピングは相性もよい。

 

 

北海道や大分で地方創生に取り組むスノーピーク

自治体が民間活用して観光誘客に取り組んでいる事例として、アウトドアブランドのスノーピークは北海道帯広市や大分県日田市、高知県などで地方創生に取り組んでいる。スノーピークの山井社長は事業のミッションを人間性の回復ととらえ、自然と人をつなぐ事業として地方創生の観点でキャンプ場の運営に取り組んでいる。
現時点でのスノーピークの地方創生の取り組みは、キャンプ場運営が主体であるが、今後はグランピングの展開も視野に入ってくるだろう。
スノーピーカーと呼ばれる多くのファンを持つ同社の集客力がこの地方創生事業で活かされており、各地方のキャンプ場の運営は概ね好調のようである。キャンプ場運営はスノーピークが直営しているケースとコンサルティングを実施するケースの2パターンがある。
同社は環境省からも国立公園のオフィシャルパートナーに選定されており、自然を活かした地方創生ビジネスのリーディングカンパニーである。

 

 

指定管理料を引き下げ、集客に成功した事例

千葉県安房郡に本社をおく株式会社R.projectも地方創生に取り組む事業者である。
株式会社R.projectは、主に取り壊しが予定されていた公共施設や企業の保養所を宿泊施設や研修施設にリノベーションして地方創生に取り組んでいる。
具体的な事例には東京都千代田区が所有していた臨海学校跡地をフットサルとスカッシュコートつきの合宿施設にコンバージョンした事例や大手企業が所有していた保養所を一棟貸しができる宿泊施設にリニューアルした実績がある。
また千葉市の昭和の森フォレストビレッジでは、キャンプ場とユースホステルの公募に応募し、従来の指定管理業者が指定管理料を受け取っていたのに対し、逆に賃料を市に支払うモデルに転換させ、千葉市の財政負担の軽減にも貢献している。

 

 

第3セクターが運営する温泉施設がグランピングに取り組む事例

また、関西のある第3セクター企業が運営する温泉施設では、隣接の遊休地にグランピング施設を展開し、本業の温泉施設の集客アップや収支向上に取り組んでいる事例がある。この事例では、近隣の市町村でグランピング施設を展開する民間企業が開業のための情報やノウハウを提供し、難易度の高い集客についても担っている。地元企業と第3セクター企業の共同事業であり、地方創生の新しいパターンとして注目される。グランピング施設の経営において、最も成功ハードルが高い集客分野をグランピング施設の運営経験が豊富な事業者が担当することで、第3セクター企業のリスクを低下させている点がポイントである。
また、指定管理者として温泉施設を運営している企業が新規事業に多額の追加投資を行う事例は珍しいが、今後同様のスキームで施設を活性化させる企業が増えるかもしれない。

 

 

 

指定管理者制度の委託期間の問題

指定管理者となっている企業の悩みとしてよく聞くのが、委託期間が多くのケースで5年に設定されており、大きな投資ができないという問題である。5年サイクルで指定管理者の選定が行われるため、選定から外れてしまった場合には、投資回収のための期間が十分でないという問題である。また従業者の雇用問題も絡むため、新規の雇用者を増やすことを躊躇する企業も多い。
他にも施設の宿泊料金などの利用料に上限が設定されており、リニューアルの投資がしにくいといった点なども活力ある施設づくりの障害になっている。
今後、公営施設を地域活性化のための雇用創出・観光需要創出の起爆剤にしていくためには、このような枠組みの見直しも必要になってくるであろう。

 

 

地方自治体とアウトドア業界の連携は地方創生の成功パターンに

現状では国内の過半数のキャンプ場が公営である。公営施設にはリーズナブルに市民に活用してもらうという設立時の理念があるため、利用料は安く設定されている。価格もずっと据え置かれている。満足にスタッフを雇用できないほど安すぎる。
今後、過疎高齢化が進んでいる地方では、若年人口はますます減少する。高齢化する地元住民のキャンプ場を利用回数が増加するとは考えにくく、集客のダウントレンドが始まるかもしれない。地元住民の生活を豊かにするという理念も見直しが必要になってきている。
このような背景から多くの公営キャンプ場経営の将来を考えた場合、客単価も高く、集客力も見込めるグランピング施設にコンバージョンする事例は今後一層増加していくことになるだろう。
優れたロケーションのキャンプ場は再生され、観光需要を生み出す宝になりうるし、そのビジネスモデルを実現する企業も登場し始めた。
地方自治体とアウトドア業界のマッチングにより、地方創生が盛り上がりを見せる日もそう遠くはなさそうである。