今回はグランピング業界の市場動向、市場規模、マーケットデータについて解説していきます。
まず、下表にグランピング施設の宿泊機能に関するデータを整理しました。
グランピングの宿泊機能に関する調査結果
エリア | コテージ(築古) | コテージ(築浅) | コットンテント | ドームテント | ロータスベルテント | その他テント | トレーラー | 客室プラン |
関東 | 40 | 10 | 50 | 15 | 3 | 9 | 11 | 25 |
関西 | 11 | 22 | 17 | 10 | 3 | 2 | 5 | 2 |
東海 | 8 | 0 | 6 | 3 | 0 | 0 | 0 | 4 |
北海道 | 5 | 0 | 7 | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 |
北陸・新潟 | 0 | 0 | 10 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
東北 | 2 | 0 | 8 | 1 | 1 | 0 | 1 | 1 |
中四国 | 7 | 2 | 11 | 5 | 0 | 4 | 0 | 1 |
九州 | 7 | 4 | 14 | 3 | 3 | 3 | 2 | 10 |
沖縄 | 9 | 3 | 1 | 1 | 1 | 0 | 0 | 4 |
全国 | 89 | 41 | 124 | 39 | 10 | 18 | 21 | 49 |
圧倒的にコットンテントの施設が多くなっています。理由は設置の手軽さと導入コストの低さと予想されます。
コットンテントのグランピング施設では、ユーザーの快適性が担保できない点や雪や台風による倒壊事例が多く、撤退施設も多くなっています。
また近年、導入が増えているドームテント型施設は全国39ヵ所となっており、稀少性は薄れてきました。トレーラー型施設については、集客に苦戦する事例が多いことが認知され始め、施設の増加数は限られているようです。
現状では、人気施設はドームテント型施設、コテージの築浅タイプ、他テントの宙吊りタイプやオリジナル設計タイプ、ロータスベルテントの施設が大多数を占めています。
コットンテントで人気化している施設は、施設規模が大きいのが特徴で、テーマパーク併設型や日帰りBBQ併設型、農業体験施設の併設型など、宿泊機能以外の部分で集客できる要素を持っているのが特徴です。
コロナ禍において、大型ホテルの苦境が続いており、打開策として既存客室内にテントを設置したり、夕食BBQプランにするなどの取り組みも全国49施設で確認できましたが、販売動向は、いまいちの印象です。
エリア別では関東、関西が先行
人口が多い関東圏での施設整備数が多く、全体の半数近くを占めています。
特に関東を商圏としたエリアには、山梨県や長野県、静岡県の一部が含まれるため、もともとキャンプ場が多い山梨・長野の事業者の参入、旅館やホテルが多い静岡県でグランピングに取り組む事業者が多いことが、グランピング施設数を押し上げた要因となっています。
また、続いて旅行マーケットの大きい関西エリアが全国の施設数の2割近くを占める結果となっています。関西からも近く有望立地の一つと考えられる東海エリアの施設整備数が少なく、滋賀県のグランピング施設などに愛知県や岐阜県から集客が行われていることがうかがえます。
九州エリアは着々と整備が進むが、北陸・東北・北海道は施設開業が滞る
また、その他のエリアでは、九州エリアでの施設整備が増加傾向にあります。九州の有望立地と考えられる福岡市近隣の福津や糸島エリアをはじめ、温泉資源に恵まれている大分県などでも参入を目指す事業者が増加しています。
九州エリアでは、「ぶどうの樹」、「湯布院グランピングCOMOREBI」といった九州地区で知名度の高い人気施設が登場したことをきっかけに、近隣エリアでグランピング施設を開業しようという動きが加速しています。
一方で、施設運営のネックとなる豪雪エリアである北陸、東北、北海道は施設整備が進まない傾向があります。冬季休業が前提となりやすく、キャンプ場も整備されてこなかったため、キャンプ場からのグランピング市場への参入も限定的となっています。
特に人気施設の主力商材となったドームテントの導入は、山形県と北海道に1施設ずつの合計2施設といった状況で、北陸、東北、北海道では、ほとんど皆無の状況となっており、新規市場参入者の登場が期待されます。
中四国エリアは小規模施設が多く、参入余地が大きい
中四国エリアには、ドームテント型施設が5ヵ所点在していますが、小規模施設が多い上、マイカーでアクセスできない離島に立地するケースや、サウンディング調査の期間限定営業の施設が大半を占めています。既存施設の立地や内容を考えますと、中四国エリアもドームテントの大型施設を開業すれば、エリアNO.1のグランピング施設になることは間違いなさそうです。
中四国エリアにおいては、広島市、岡山市、倉敷市、松山市などの商圏が取り込める「しまなみエリア」は風光明媚であり、参入検討をするには、好立地と考えられます。中四国エリアの国内旅行市場におけるシェアは約5%で推移しています。後ほど、触れますがグランピングの全国での市場規模を600億円~800億円とした場合、30億円~40億円のグランピング市場があると推測されます。
グランピングの市場規模は600億円~800億円
下表は「グランピング」を謳う施設の調査結果です。全国353ヵ所ありました。
◆グランピング施設の類型
エリア | 人気施設 | グランピング | コテージ型 | ホテル型 | キャンプ場型 | 計 |
関東 | 35 | 50 | 30 | 40 | 27 | 147 |
関西 | 30 | 31 | 25 | 4 | 4 | 64 |
東海 | 6 | 7 | 8 | 3 | 2 | 20 |
北海道 | 0 | 2 | 5 | 1 | 6 | 14 |
北陸・新潟 | 0 | 1 | 0 | 6 | 4 | 11 |
東北 | 2 | 3 | 1 | 6 | 3 | 13 |
中四国 | 6 | 9 | 8 | 2 | 7 | 26 |
九州 | 6 | 11 | 7 | 11 | 12 | 41 |
沖縄 | 0 | 1 | 12 | 1 | 4 | 18 |
全国 | 85 | 115 | 96 | 74 | 69 | 354 |
「グランピング」・・・開業当初よりグランピング施設として認知されている
「コテージ型」 ・・・開業後に「グランピング」を取り入れた施設
「ホテル型」 ・・・既存客室を利用し、食事プランがグランピングBBQの施設
「キャンプ場型」・・・キャンプ場の一部に仮説ないし常設テントを設置した施設
「人気施設」 ・・・私共の独断で人気があると判断した施設
玉石混合のグランピング施設において、少々乱暴ですが、353施設の平均年商を5,000万円と予想します。3億円以上の年商を誇るグランピング施設も存在しますが、ホテルのグランピングプランやキャンプ場にテントを設置しただけの施設は年間売上が数百万円という事案も多そうなので、ざっくりと年商5,000万円とさせていだだきました。
353施設×5,000万円(平均年商予測)=176.5億円
また、グランピングを謳っていないコテージ、バンガロー、キャビン、トレーラー施設は全国では1,000施設以上、存在します。これらの施設もグランピング市場を形成する施設と捉えた場合は、
グランピングを謳わない1000施設 × 5,000万円(予測平均年商)= 500億円
さきほどのグランピングを謳う施設の積算売上高を加えて、
グランピングニーズ≒泊りのBBQニーズ≒676.5億円(176.5億円+500億円)
といった試算となりました。
宿泊施設に向けたアンケート調査を行わない限り、正確な数字は判明しませんが、現状では、色々な角度から検証した600億円~800億円程度が市場規模と考えるのが妥当ではないでしょうか。
グランピングの潜在市場規模は2000億円~3000億円も
矢野経済研究所によると、ホテルの国内市場規模(事業者売上高ベース)は2兆291億円(2018年度)と発表されています。
今回予想したグランピング関連市場の600億円~800億円は、国内旅行市場において非常に小さなシェアであることがうかがえます。
楽天トラベルの施設登録数だけでも。3.3万件があり、内グランピング施設は240件ほどです。1%にも満たない少数派です。
また、キャンプ場検索サイトの「なっぷ」では、4000施設以上が登録されている中で、グランピング施設は200件ほどです。これまた5%の少数派です。
私共は市場規模が小さいのは、施設数がまだまだ少ないためだと考えています。
某大手コンサルティング会社は、グランピングマーケットはキャンプマーケットではなく、ホテル・旅館マーケットを奪取していると解説していますが、その点は私たちも同じ見方をしています。
グランピングの支持層が若年層であり、シニア層は集客が困難なこと、また、冬季の集客が難しいビジネスであることを考慮してみても、施設開発が活況となってきた昨今、グランピングの認知が進むのは間違いなさそうです。コロナ禍で行き場を無くしたファンドや投資家の資金もグランピング施設への投資に向きつつあります。
このような業界背景から、グランピング業界の市場規模が2000億円~3000億円育つ日も遠くないと考えています。
コロナ禍で、アウトドア選好が強まり、グランピングの人気が高まっていることも、多くの人に知られつつあります。このような流れも、グランピングの市場規模を大きくする追い風となっています。
良質な施設が多く整備されることで、マーケット全体の規模拡大が実現され、さらには地方創生につながることを切望しつつ、我々も微力ながら業界の発展に貢献していきたいと考えています。