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アフターコロナで明暗が分かれる宿泊業界

コロナウイルスによるパンデミック。
ホテル・旅館業界はかつてない危機に見舞われています。
特にインバウンドに力を入れてきた宿泊事業者はコロナ終息後も、その影響が長引くことが予想されるため、深刻な事態です。

宿泊業界では、コロナウイルス収束後、コロナ前とは、経営の前提条件が大きく変化すると指摘されています。コロナ後の宿泊業界に焦点をあて、今後の業界の動向を探ってみたいと思います。

まず宿泊業界の業態を大まかにピックアップします。

【宿泊施設の各種業態】
1.ビジネスホテル
2.リゾートホテル
3.温泉旅館
4.スモールラグジュアリーホテル&旅館
5.シティホテル
6.コテージ・貸別荘
7.キャンプ場・グランピング施設
8.民泊施設
9.会員制リゾート

他にも宿泊施設のタイプはあるかもしれませんが、ここでは、9つに分類してコロナ後の明暗を予測してみます。

宿泊業態 業績回復 備考
ビジネスホテル × 下落トレンドが続きそう
リゾートホテル 大都市周辺のローカル立地は回復早い
温泉旅館 大都市周辺のローカル立地は回復早い
スモール高級旅館 離れ型は回復傾向。GoToキャンペーン◎
シティホテル × 都会立地は難しい
コテージ・貸別荘 大都市周辺施設は特に◎
キャンプ場・グランピング施設 3密イメージがなく〇
民泊施設 × インバウンドは当面、期待薄
会員制リゾート 固定客があり、底堅い

 

ビジネスホテル

都心立地のビジネスホテルはかなり厳しくなる見込みです。インバウンド狙いで開発されたホテルは特に厳しい状況が続きそうです。コロナウイルスの感染は世界中に広がっており、各国で感染の状況は異なるため、コロナ前のインバウンド市場に戻るには、かなりの時間を要するでしょう。
そもそも供給過多を指摘されている状況からのコロナショックですから最も厳しい業態の一つといえます。
また外出自粛要請により、数多くの企業がリモートワークに取り組んだことも、今後、ビジネスホテル業界には逆風となるでしょう。出張や会議のあり方を見直す企業も多いとみられ、仕事による移動、宿泊の市場は縮小トレンドに入ってしまうかもしれません。
テレワークの受け皿となるプラン販売を行うビジネスホテルもありますが、乱造された客室をまかなうほどの需要は到底期待できません。

 

リゾートホテル

リゾートホテルは立地によっては、戻りが早いと予想されます。飛行機の利用が前提で、関東・関西の大商圏から移動距離があるロケーションのリゾートホテルは当面厳しい状況が続きそうです。代表的な例は沖縄や北海道です。コロナウイルスの影響で飛行機など長距離移動を伴う旅行は避けられる傾向が出ていますので、回復には時間が必要になります。
また、リゾートホテルの場合は、旅行代理店による団体旅行や募集型旅行で集客していたホテルは厳しくなる予想です。団体旅行もコロナ禍では需要が消失してしまった状況であり、回復には時間をかなり要すると思われます。

 

温泉旅館

大型で客室数が多く、バイキング形式の食事提供を行っている旅館は厳しい状況が続いているようです。ビュッフェ形式をとりやめ、部屋食対応を進め、それをホームページで告知するなどの対策が必要となっています。弊社調査では、「ビュッフェや大宴会場利用のホテルは選びづらい」と回答した方が27.4%ありました。
リゾートホテルと同様、リアルエージェントの団体旅行に頼ってきた温泉旅館は厳しい状況です。旅行代理店によるツアー用の在庫ブロックにも注意が必要です。バス旅行でシニア層が多い場合などは、コロナウイルスの感染状況が少し悪化した程度で、催行中止によるキャンセルリスクを負うことになります。

 

スモールラグジュアリー旅館&ホテル

離れ型の高級旅館は好調です。特に都心部から距離の近い箱根や熱海などの高級旅館は客足の戻りは早いです。
また、7月22日から「Go To キャンペーン」がスタートしますが、高級旅館は他の宿泊業態よりも多くの恩恵を受けると予測されています。
今回の「Go To キャンペーン」では宿泊代金の35%が割引(地域共通クーポンの15%を除く)されますが、その上限金額が14,000円もあるため、「割引額を有効活用したい」、「普段泊まらない高級宿に行きたい」と考える旅行者が多くなると予想されています。

 

シティホテル

東京都や大阪府など人口が多い都道府県は当然のごとく感染者数も多くなります。マスコミなどメディアの報道も大都市での感染拡大を取り上げる頻度が高いため、「東京や大阪に行くのはこわい」といった感情を持つ人が多くなっています。
都心エリアの宿泊施設の業績回復は時間がかかりそうです。
弊社実施のインターネットアンケート調査(回答数1003)でも、「感染拡大がおさまらない都会への旅行を避けたい」とした回答が過半数(50.3%)を超えています。
また、東京ディズニーランドやUSJ大阪など、当地を代表するテーマパークの入場制限などのニュースも周辺ホテルの集客にはマイナスの影響があります。アンケートでも「東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパン大阪は行先に選択しにくい」といった回答が半数近く(49.9%)を占めています。
くわえて2020年7月現在、フロリダのディズニーランドは休業継続、香港ディズニーでは、コロナ第2波を懸念した政府の要請により、再休業に追い込まれるなどのニュースもイメージ悪化に追い打ちをかけています。

 

コテージ・貸別荘

コテージや貸別荘は、コロナウイルスの影響を受けにくい宿泊業態といえます。キャンプ場と異なり、悪天不順にもある程度対応できるため、2020年7月以降は稼働率が上昇している施設も多くなっています。
また若者のグループ客が多いグランピングとは異なり、コテージや貸別荘はファミリー利用にも適しているため、グランピング施設よりも、客足の戻りは早いようです。
若者グループは旅先選びや日程調整に時間がかかる、コロナウイルスの感染状況への捉え方が仲間同士でもまちまちといった理由で、ファミリー層よりも回復に時間がかかっていることが理由と考えられます。

 

キャンプ場・グランピング施設

2020年3月には、「キャンプ場やグランピング施設が人気化している」との報道が頻繁にされました。緊急事態宣言中の4月~5月はさすがにキャンプ場・グランピング施設も厳しいところが多かったようですが、6月以降の回復は早いようです。
キャンプ施設やグランピング施設はマイカー利用が前提のケースが多く、自宅からの移動距離も少ないため、旅先の候補になりやすい状況は今後も続きそうです。
夏休みの短縮や7月は雨が多かったことなど、マイナス面もありましたが、コロナウイルスの悪影響を受けにくい宿泊業態の代表格といえるかと思います。

 

民泊施設

コロナの悪影響を最も受けている宿泊業態。インバウンドの人気エリアで、民泊が急増した京都市内や大阪市内のマンションを利用した民泊施設は、大半が撤退をせざるを得ない状況に追い込まれています。テレワークやクラウドファンディングを駆使して、危機を乗り越えようと試みている施設もありますが、元の売上に回復させることは至難の業でしょう。
また、京都市内などに多い町屋や古民家をリノベーションした宿泊施設は一層深刻な状況です。投資が少ない遊休のマンションと比較して、数千万円から億単位のリノベーション費用や不動産投資を行っていますので、簡単には撤退できない事情があるからです。
もともと外国人をターゲットに作られた物件は日本人の好みに合わないようで、大手オンラインサイトで国内向け販売に取り組む事業者もありますが、非常に厳しい状況です。

 

会員制リゾート

大手会員制リゾートの宿泊者数は、他業態ほどの落ち込みはないようです。全く知らないホテルや旅館に行くわけではないので、利用者側に安心感があるのかもしれません。
また、「他府県ナンバーの車だと白い目で見られる」などという状況も会員制リゾートの場合はストレスが少ないのでしょう。もともと地方にある会員制リゾートホテルは東京・大阪などの都市部の会員が大半を占めていることは利用する側も認識があります。

 

まとめ

あくまで各業態の傾向について記載していますので、個別事業者ごとの例外はあるかもしれません。全体的に好調といわれているグランピング施設でも、新規開業施設でコロナ以外の理由で業績不振に苦しんでいる施設も散見されます。
いずれにせよ、大半の旅行者の価値観がたった数か月で大きく変化してしまいました。
この潮流をいち早くつかみ、個別事情を勘案しつつも経営資源の再配分をスピーディーかつ大胆に進めていくことが、苦境に立たされている宿泊業界に求められています。

 

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